何時かの写真 #211


街角の一角にひっそりと佇む古いたばこ屋。昔は近所の人たちが集まり、店主との会話が弾む場所だったが、今ではシャッターが閉まり、かつての賑わいを想像させる面影だけが残っていた。店の前に置かれた灰皿は、もう何日も掃除されていない様子で、風に吹かれて舞い込んだ葉っぱが溜まっている。灰皿の横には古びた自動販売機が一台、錆びつきながらもまだしっかりとそこに立っている。ボタンは擦り切れ、ところどころ色が剥がれていた。

ユウスケは、ふとその自動販売機の前で立ち止まった。学生の頃、よくこのたばこ屋の前を通り過ぎては、好奇心でたばこの自販機を眺めていたのを思い出す。「あの頃はまだたばこなんて吸うこともなかったけど、大人になったらかっこいいのかな、なんて思ってたっけ」と微笑みながら、彼は財布から小銭を取り出し、自販機に目を向けた。

久しぶりに訪れたこの場所は、変わったようで変わっていない。錆びついた自販機の側面には、かつての鮮やかな広告が色褪せて見える。数年前まではシャッターが開いていて、年老いた店主が腰かけていた光景が蘇る。あの頃はここでたばこを買う人々が、灰皿を囲んで話し込む光景も日常的だった。

自販機にお金を入れると、かすかな機械音が響き、たばこの箱が下の取り出し口に転がってきた。その音さえも、なんとなく懐かしく感じる。自販機から取り出したたばこの箱を手に取ると、ユウスケは一瞬、足を止め、シャッターが閉まった店の方をじっと見つめた。まるでそこに、今はもういない店主の笑顔が浮かんでくるかのようだった。

「まだ店を開ける日は来るのだろうか?」そんな疑問が頭をよぎるが、答えは風に流されていく。ユウスケは手にしたたばこをポケットにしまい、ゆっくりとその場を後にした。灰皿の脇を通り過ぎると、かすかな風が錆びついた自販機の広告紙を揺らし、かつての街の賑わいを僅かに思い出させるようだった。

静かな街角に残る、かつての生活の名残。ユウスケはその余韻を感じながら、再び自分の道を歩き始めた。

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何時かの一曲
Oasis - Chigarettes & Alcohol

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