何時かの写真 #208

夕方、町の通りが静かになり始める頃、祭りの後の余韻がまだ街角に漂っていた。提灯が風に揺られ、道にはちらほらと祭り帰りの人々が見え隠れする。通りの角にある古びた雑貨店「豊田屋」は、祭りの間中、多くの人々で賑わっていたが、今は静けさが戻り、暖かな照明が店の窓から漏れていた。

豊田屋は昔ながらの民芸品やお祝い用品、生活雑貨が所狭しと並ぶ、町の人々にとって親しみのある場所だった。木の引き戸を開けると、どこか懐かしい香りが漂い、店内には手作りの風鈴や竹細工、色鮮やかな布製の日傘が吊るされていた。

店先で日傘を選んでいるのは、モンベルのカジュアルなアウトドアウェアをまとった女性だった。彼女は祭りの後、一人でこの店に立ち寄り、店先に並んでいる日傘に目を留めていた。夕焼けに染まる空が、彼女の背中を静かに照らしている。

彼女の手に取った日傘は、白地に赤い花柄が描かれたもの。細かな手作業で作られたその傘は、昔ながらの日本の美しさを感じさせる品だった。彼女は軽く傘を開き、その模様をじっと見つめた。日が沈みかけて、空がオレンジ色に染まる中、傘の柄が夕日に映えて、まるで祭りの華やかさを再現しているかのようだった。

店主の年配の女性がカウンター越しに声をかけた。「それ、良い傘ですよ。昔からこの店で一番人気なんです。お祭りで使う方も多いんですよ。」

女性は微笑みながら「とても素敵ですね。なんだか、今日の祭りの雰囲気をそのまま閉じ込めたような気がします」と応じた。彼女の声は穏やかで、どこか名残惜しそうな響きを帯びていた。

祭りの終わりには、いつも少し寂しさが付きまとう。賑やかだった時間が過ぎ去り、静寂が戻る瞬間の切なさ。しかし、彼女にとって、この日傘はその祭りの記憶を持ち帰る小さな思い出になりそうだった。

「どうされますか？」と店主が聞くと、女性は軽くうなずき「これをいただきます」と答えた。夕方の風が店内を優しく通り抜け、竹の風鈴が涼やかな音を奏でた。

女性は日傘を抱えて店を出ると、ふと振り返って豊田屋を見上げた。古い木造の店は、これからもずっと、この町の歴史を見守り続けるのだろう。彼女は静かに歩き出し、祭りの終わった通りを傘を軽く振りながら歩いていった。

街の向こうには、赤く染まる空と夕闇がじわじわと広がり始め、彼女のシルエットがその中に溶け込んでいった。

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何時かの一曲

Newton Faulkner - Over&Out