CB400SFがある風景 #6


午後の日差しが斜めに差し込む頃、ユウタは愛車のホンダCB400SFで田んぼ沿いの道をゆっくり走っていた。まだ残暑が厳しく、太陽の光は熱を帯びていたが、風が少しずつ涼しくなり始め、秋の気配が感じられる。空は青く、遠くの雲がゆっくりと流れていく中、田んぼは黄金色に輝く稲穂でいっぱいだった。

「稲刈りが始まったな…」と、ユウタはヘルメット越しに風景を眺めながら思った。あぜ道には収穫を終えた稲束が整然と並び、農家の人たちが忙しそうに作業をしている。そんな光景を目にしながら、ユウタは田んぼの脇に一際目を引く真っ赤な彼岸花を見つけた。

彼岸花は、その鮮やかな赤が逆光に照らされて、まるで燃え上がる炎のように輝いていた。稲穂の黄金色と彼岸花の赤が、自然のキャンバスに鮮やかに描かれているかのようだった。ユウタはその美しさに心を奪われ、少しアクセルを緩め、バイクを停めた。

エンジン音が静かに止まり、周囲の音が鮮明に聞こえ始めた。稲刈りの音、鳥の鳴き声、そして風が稲穂を揺らす音が心地よいリズムを刻んでいる。午後の日差しは、低く傾きかけていて、逆光がユウタと景色全体に柔らかな影を落としていた。彼岸花が輝くその瞬間、まるで時間が止まったかのように、風景が一枚の絵画のように広がっていた。

ユウタはバイクから降り、近くに立って景色を眺めた。CB400SFのシルエットが逆光に溶け込み、彼岸花と田んぼ、そして収穫の光景が一つの物語のように目の前に展開している。「こうして毎年、季節は巡っていくんだな」と、彼は感慨深く思った。

この場所に来るのは初めてではなかったが、今年の秋は特別に感じられた。彼岸花の鮮やかな赤が夏の終わりと秋の始まりを告げ、稲穂が収穫される音が、今年の実りを祝うかのようだった。風がまた彼の頬をなで、遠くの山々が静かに見守っている。

「さて、行くか…」ユウタは心の中でつぶやき、再びバイクに跨った。エンジンをかけると、CB400SFの4気筒エンジンが滑らかに唸りをあげ、彼の身体にその振動が伝わってきた。彼はアクセルを軽くひねり、バイクを動かし始めた。

午後の日差しに逆光で照らされた彼岸花が、バイクの後ろに遠ざかっていく。その花は、まるで次の季節を静かに見送るかのように、風に揺れながら立っていた。ユウタは再び走り出し、残暑の中を涼しさと共に駆け抜けていった。

彼にとって、この一瞬の風景は、いつまでも心に刻まれるものになった。季節が移り変わるその瞬間をバイクと共に感じながら、ユウタは今日も自由な風の中を走り続ける。

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